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zoom RSS  源氏物語 『あさきゆめにし』

<<   作成日時 : 2010/11/11 23:48   >>

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図書館をぶらついていた私の目に、何気に留まった
『知識ゼロからの源氏物語』と言う本
「う〜む。光源氏か・・
あのグインサーガのアルド・ナリスと、どちらが美形かな!?」
などと、馬鹿げた空想をしながら軽い気持ちで借りて読んでみたところ、これがなかなか後を引く
本の紹介で、“初心者は大和和紀の『あさきゆめにし』もお勧め”と書いてあったので早速ネットで図書館に予約してみた。
これが我ながら驚くほど『大ヒット!!』・・泣けて、泣けて・・
・・特に《紫の上》には・・もう、泣けて、泣けて・・

《若紫》の章で18才の源氏が初めて出会った、藤壺の宮似の光り輝くような才気に満ちた愛らしい10才の少女 
祖母の死後、半ば、かどわかされるような形で強引に源氏に引き取られ、掌中の玉として理想の貴婦人へと教育し、育てあげられる
それは、この世では二度と手に入れることの出来ない《藤壺の宮》という理想の女性の代わりとして一生、自分の傍におきたいという願望・・
親として、兄として、恋人として・・長い年月をかけて徹底的に自分好みの理想の妻として育てあげていったのである

しかし、妻となった《紫の上》は華やかな生活の半面、源氏の女性関係に一生悩まされることとなり心休まる暇も無い
その当時の女性の立場、帰る家を持たない《紫の上》の身としては、源氏の愛だけが便りであった
源氏好みの素晴らしい女性となるために、心を卑屈にすることなく、隅々まで心を尽くして、様々な場面で素晴らしい才を発揮しながら日々がんばって過ごしていたのでしょうか 

そんな源氏との人生もやっと落ち着いてきた中年の頃、またしても源氏は取り付かれたように 《藤壺の宮》と言う夢を追って《女三ノ宮》の降嫁という、紫の上がどんなに努力しても手に入れることの出来ない身分の高い14歳の少女を、こともあろうか正妻に娶ってしまった 

“高貴な身分”というだけで何の努力も無く奪われてしまった正妻の座。
紫の上の心情は当然、穏やかではいられない 
どうする事も出来ない事は、利口な紫の上のこと、十分過ぎるくらい理解していた。 
それでも込み上げる虚しさ・・・オョョ〜泣けるねぇ〜!

こんな感じだったでしょうか
ただの色恋沙汰の本とばかり思い込んでいた私でしたので千年も昔に、こんなに面白い物語が書かれていたなんて本当に驚きでした・・
いよいよ面白くなってきたので、次の段階として“現代訳本”に挑戦 
瀬戸内寂聴や与謝野晶子などの本を片っ端から読みあさったところ物語の背景は深められるのですが、何故か“泣けて、泣けて“という感動が起きない。感動の涙も出ないのです。
「う〜む!」・・と言う事は、私が涙していたのは
大和和紀のオリジナルの文章”という事なのかと初めて気付かされて微妙にショックを受けました。

「うっそぉ〜!!」 
『若紫』の章で紫の君が源氏に初めて出会って、この世の極楽のような秘密の花園で二人で戯れるシーンが本編には無い!!

明石の中宮が「幼い頃からお母様こそがわたくしの理想の人でした」と言う言葉に紫の上が「・・いいえ、わたくしのようになってはだめ・・」「わたくしのように殿の愛だけにすがって生きるのは女にとって決して最高の生き方とはいえないわ。あなたは私とは違う生き方が出来るはず」「・・でもやはり・・幸せだったわ・・次の世に生まれたら・・私は別の生き方を望むのかしら・・それともやはり・・もう一度あなたのような人に出会って、何時までも愛されて・・傍にいたいと・・・」この紫の上の最後の心のありったけの思いのシーンも無い・・

しかも、あのクライマックスとさえ感じる最高の場面、
明石の君が言う「あの方は・・ご自分の愛を剣に、殿の愛を盾に戦っていらした・・少なくともわたくしには“ちい姫”と言う逃げ場が会った・・男と女という絆ではなくとも、ちい姫の母であるということが、殿にわたくしを結び付けていた・・けれども・・その逃げ場を持たなかったあの方は・・ただ一人愛だけをたよりに・・
そして三ノ宮の御降嫁でその盾が砕かれてしまった時・・あの方は・・とうとう・・」
この文章がな〜い!?!?

源氏が涙ながらに言う、この文章。
「私は本当に紫の上を藤壺の宮の形代とだけ見てきたのだろうか・・
あの人に似た幼子を あの人とそっくりの女人に育てたいものと・・
いやそんなことが出来ようはずも無い。
紫の上の放つ輝きは私などが作り上げたものではない。
紫の上自身の美しい資質だったのだ。
共に笑い、共に嘆き・・共にわたってきた年月のうちに、紛れも無い紫の上自身を愛していた・・
そのことに 私自身思い至る事も無く・・
ましてや告げることも無く あの人を逝かせてしまったことよ・・・

この文章もな〜い!?!?
これだけで私などは「オョョ〜!」である 
これらの文章がないなんて、なんと寂しいことか・・

面白い発見もある 
あれだけ好色好きな源氏が、こと自分の血を分けた子供の事となると、呆れるほど、こまごまと気配りばかりの教育パパに変身することだ 
夕霧には紫の上を厳重に警戒し近づかせないように常に注意している様だったし、女二の宮の件では、花散里の君も言っているように「・・ご自分の事は棚上げなさり、あなたに少しでもそんな気配が見えると、一大事だと思われて、御忠告なさったり、陰口をきいたりなさる・・・」と言って笑っていた。夕霧も「その通りです。いつも男女の道については厳しく注意なさいます。・・」と言っていた。

明石の女御に対しても、物語の本選びや何やらいちいち細かく気遣って注意する
ところがどうだ。自分の子供として引き取った女性達、特に、玉鬘への鬱陶しいくらいの恋心には読者としてもうんざりであった。
そういえば、紫の上も兄と信頼していた気持ちを強引に侵されたのであったような・・
「この差は何だ!人間としてどうなんだ!」と叫びたくなる様な二面性を持った源氏である

当時の仏教に対しての疑問も感じる 
藤壺の宮亡き後、令泉帝に出生の秘密を告げた僧がいるが、「これって有り得ないでしょう、祈祷層は施主の願文を読むので自ずと秘密を知ってしまう。しかし、この願文とは神父が告解を聞くようなものなのでは・・秘密厳守に仏罰はないのか」
しかも、物の怪が「源氏は神仏の御加護が強いので紫の上に憑いた」ような事を言っていたが、どう考えても人としての素晴らしさは源氏などより紫の上のほうが清く正しく美しく勝っているのではないか・・
と言う事は、寺院への布施の多さで仏は霊力を出し惜しみするということなのか・・まさか・・なんとも・・・

紫の上と源氏の歌のやり取りも面白い
(源氏) はかりなき千尋の底の海松ぶさの生ひゆくすゑは我のみぞ見む*限りなく深い海の底に生える海松のように豊かに成長してゆく黒髪は私だけが見届けよう

(紫の君)千尋ともいかでか知らむ定めなく満ち干る潮ののどけからぬに*千尋も深い愛情を誓われてもがどうして分かりましょう満ちたり干いたり定めない潮のようなあなたですもの

(源氏) しほしほとまずぞ泣かるるかりそめのみるめは海人のすさびなれども*恋しいあなたを偲べばたちまち涙がとめどなく流れかりそめに契った女は旅の仮寝のほんの戯れそれでもあなたにすまなくて

(紫の上)うらなくも思ひけるかな契りしを松より波は越えじものぞと 
*正直に信じきっていたことよ末の松山を波は越えないように決して心変わりはしないと誓ってくれたあなたを信じ浮気をするなどつゆ思わずに

この紫の上の歌は、百人一首で好きになったお馴染みの歌を思い出させてくれるので、ちょっぴり嬉しかったりして・・

(清原元輔)契りきな かたみに袖を しぼりつつ末の松山 波越さじとは
*あなたと私とは、お互いに(涙でぬれる)袖を絞り絞りして、末の松山が波を越す事の無いように、二人の仲は末永く変るまいとかたく契りはしたことでしたね

(紫の上) 目に近くうつればかはる世の中を行く末遠く頼みけるかな 
*目の当たりにこうも早く心の移り変わっていく儚い夫婦の仲なのに行く末長く変らないなど 頼って信じてきたことよ

(源氏) 命こそ絶ゆとも絶えめ定めなき世の常ならぬなかの契りを
*儚い人の命は 絶える時には絶えもしようが 無常のこの世とは違う 私達二人の仲は 絶える事も無いのですよ

こうして、紫の上の歌をみていても源氏の心は信用できないという積み重ね
結局、自業自得とはいえ手前勝手な愛情で自分の世界だけの愛を求め、楽しもうとする源氏は、すべての女性にある程度の距離を置かれて、ある意味では捨てられたと言う事でしょうか?!

ここで一句、川柳を 
お気の毒 源氏とウッズ(タイガーウッズ)の 共通点  

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